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「お友達から、お願いします!」
「えーと……」
―――――フィリアに触るな、この犬マニア!
フィリアの手を握り、はあはあと気持ち悪く興奮している亮太を横目で睨み付ける……が、今の俺にはそれ以上のことは出来なかった。
今ここで亮太に手を出したら、今まで演技をしてきた全てが台無しになってしまう。
仕方がないが、とりあえず今は退散するしかないようだ。
「く……っ!」
「え、あ……ゆー君!?」
もどかしさに歯噛みしつつ、俺はフィリアの手を掴んで走り出した。フィリアは一瞬俺と亮太の二人から引っ張られて体勢を崩したが、すぐに亮太の手を振り払い俺の手を握り返した。
「フィリアたぁぁぁぁぁん!!!!」
「気持ち悪」
亮太の気持ち悪い叫びと、兎丸の本気で気持ち悪そうな声を聞きながら、俺はフィリアの手を引いて廊下の角を曲がった。
すぐ側にある階段を駆け上り、二階へと到達して漸く速度を緩める。どうやら、亮太は追いかけてこないようだ。
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