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「……ゆー君」
確認のために階段を覗いている最中、すぐ後ろから控え目に声をかけられた。誰何の声をかけるべくもなく声の主は分かっているため、慌てて後ろを向いた。
「フィリア……さん、どうかしましたか?」
危ない、もう少しで呼び捨てにしてしまうところだった。
ボロが出ないよう、細心の注意を払いながらフィリアを見やる。フィリアは俯いていた。ふわふわとした柔らかそうな髪が垂れ、その小さな顔を覆い隠している。
「…………」
「……フィリアさん?」
そのまま一言も発しないで黙り込んでしまったフィリア。疑問に思い、再度声をかけても返事はない。すっかりただの屍化してしまったようだ。
「……とりあえず、クラスに戻りませんか?」
「…………」
返事がない、ただの屍のようだ。
「クラスに戻りますからね?」
このまま立ち尽くしているのもあれなので、俺はフィリアの手を引いて歩き出した。
そして、きっかり三歩でその歩みを止めた。
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