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「いてっ!地味に破片が刺さっていってぇ!うわ、血ぃ出た!」
床に片膝を着きなんか叫んでいる皇紀を無視して、俺はフィリアに小さく頭を下げた。髪が揺れて、俺の視界を狭くする。
「急にすみませんでした」
先程から一変。冷たく、他人行儀な口調でフィリアの心を突き放す。そして、俺はくるりと体を反転させて脱兎のごとく逃走を始めた。
「っ!ゆー君!」
フィリアの声が追い掛けてくる。いつもは柔らかく温かな声が廊下に反響し、鋭く、熱くなって俺の体に染み込んでいく。
―――――ダメだ。感情に縛られては、いけない。
俺は、走りながら熱い吐息を吐き出す。焦がれるものに酷く揺すぶられ、必死に崩壊寸前となってしまった心を自制力で塗り固めた。
「……はぁっ!」
心が苦しい。
抑制されて、圧迫されて、実体など持たないはずの俺の心は、確かに軋んでいた。
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