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「さて……」
小さく呟いてから俺は戸を睨み付けた。そして、
「とりあえず、接触を避けるために窓から行くか……」
『いやいやいや!ここは思いっきり戸を開けて、なんで朝っぱらからいるんだ!というか、門はどうやって開けた!?って叫ぶところでしょ!?』
靴を片手に持ち音をたてないように玄関から退散、縁側から外に出ようとした俺に、ユウヤが激しいツッコミを入れる。
「無理だ!そんなこと言えない!というか、タメ口もしない!出来ない!」
『きっと大丈夫だって!ほら、早く!』
「無理無理、朝からシリアスとか無理だ!」
情けなく弱音を吐く俺を懸命に叱咤激励するユウヤ。俺はそれを拒否しながら縁側へと向かう。
「はぁ……」
ヒヤリとした床を歩きながら、俺は安堵の息を吐いた。今は朝だったからいいものの、もしも今が昼を過ぎていたら多くの門下生に一人で叫んでいるところを見られていただろう。
そして、ついに長い廊下の角を曲がり、縁側と庭園を一望した。瞬間、
「なんでだ!?」
俺は力一杯叫び、その場に立ち尽くした。
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