***last***

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ユウさんに殴られんのかなって はんぶんビビってたけど がしゃんって音を立てたのは ヒロトじゃなくて、 たった今来たすみれが持っていた缶コーヒーだった 「…殴ったって・・・誰を…?」 「…ごめん」 「ごめんじゃないよ、 うそつかないでよ…殴ってないでしょ?」 「・・・」 「アツシは…アツシはハルにそんなことしないよ… そうでしょ?」 「するつもりなんて…なかったよ、でも…」 「なんで…なんでそんなそこするの?なんでよ…ねぇなんで?」 「すみれ」 きっとはじめて呼ばれた呼び捨て ユウさんが止めてくんなきゃ 俺殺されてたかもね… 「頼むから黙ってて… 俺久々にキレそうなんだわ」 ユウさんの方に顔を向けたすみれは ため込んでた涙をぼたぼた流す ここまで怒りに満ちたユウさんを見たことがない そんなユウさんは 紺の前掛けを乱暴に剥がして 俺の胸に投げつける 「馬鹿は店でおりこうさんに待ってろ」 『帰りたい』 呪文のように何度も言うハルは 看病させるどころか 俺がそばに来ると 『いやだいやだ』の一点張りになった そんなハルから逃げるように ふたりになんも言えない俺は いつまでたってもナツには勝てない ハルを無理に閉じ込めて 苦しめるしかできない ちっぽけな臆病ものなんだ…
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