16人が本棚に入れています
本棚に追加
ここは何処だろう?
身体が、自由に動いてくれない。
……ということは、僕はまた“例の夢”を視ているのか。
沢城和真(さわしろかずま)は、夢の中の風景を目を凝らして眺めた。
よく見てみると、其処は和真の通っている高校の屋上だった。
夢の中はいつもと同じで、視界は狭く正確な状況の判断が難しかった。
すると、和真の視界にとある女子生徒の姿が映った。
あの娘、何やってるんだ? あんな端っこにいたら危ないのに……。
屋上の柵に背を向けて、凭れ掛かる少女をひやひやしながら見ていた、その時。
柵が壊れてバランスを崩し、少女の体は空中へ投げ出された。
『危ない…―――っ!!』
和真がそう叫んだ時は、もう手遅れだった。
―――ドンッ。
鈍い音を立てて落下した少女の姿を確認する為、策の近くへ急いで駆け寄る。
彼の目に映ったのは、裏庭で頭からドクドクと血を流しながら倒れている少女の姿。その瞳は大きく見開かれ、僅かに涙が滲んでいた。
うっ……今回のは、特に…ひ、酷い…――――っ。
和真はひどい吐き気と目眩に襲われ、思わず目を逸らし口元を手で強く押さえた。
いくら夢でも、一般人の高校生が直視するにはグロテスク過ぎる映像だった。
次第に視界がくらみ、和真の意識は真っ逆さまに落下していくように、現実へ引き摺り戻された―――。
最初のコメントを投稿しよう!