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「…うぅ、ん……また、夢…―――」
綺麗な艶のある黒髪をくしゃっ、と掻き乱しながら、和真は見慣れた天井を見つめた。
その髪と同じ澄んだ漆黒の瞳を欠伸で僅かに潤ませながら、左腕でごしごしと目元を擦る。
彼の肌は非常に白く、思春期の女の子達が「羨ましいっ!」と口を揃えるほどであった。十六歳の少年と言うにはかなり華奢な身体の彼は、見た目通りの高めの声をしていた。
昔中学の文化祭で女装をさせられた時の変貌ぶりは、和真の幼い頃からの親友ですら判らなかったほどの変わりようで、本気でナンパしてきた親友に対し軽蔑と憤りを感じたことを否めなかったこともあった。
ぼんやりとした頭で和真はベッドに横たわったまま、今さっきまで視ていた夢の内容を思い出していた。
高校の屋上。
見覚えのある制服。
ほっそりとした女子生徒。
あれは――――ネクタイの色が僕と同じ色だったから、一年生か。
そして、彼女は落下し――――――死んだ。
あれは、ただの事故だったのだろうか?
和真は妙な違和感を覚えつつも、ゆっくりと鉛のように重い体を起き上がらせた。
もう、いつからだったかなんて覚えてないけど、僕は幼い頃から“予知夢”というのを視ていた。
まあ、安易に言ってしまえば、的中率が非常に高い“正夢”の類だ。
正夢のようなちょっとしたデジャヴ程度なら良かったのだけれど、僕の場合は必ずと言っていい程、夢に出てきた人物の“人生の分岐点”を視ているのだ。
良いモノなら、運命の人と出逢うところ。
悪いモノなら、死ぬところ。
しかも、その的中率はほぼ百パーセントだった。
本当、最悪だよ。
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