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その場所は、田舎から少し離れた神社にあった。運良くそこには誰もいなく、俺は神社の鳥居をくぐる。
今じゃ、神社も数少ない希少な存在だ。機械街じゃあ神社なんてなかった。あの街の人間は『神』と言う抽象的存在を無いものとしているからだ。
俺は賽銭箱前に立ち、賽銭箱の中を覗き込む。見えるのは数枚の通貨、それも安い物ばかり。
昔は栄えてた神社も、今の『物質軸理論』が中心の世界じゃ信仰する意味も無しか……
俺は少し悲しくなりながらも、賽銭箱を押す。すると、賽銭箱の下には一見何も無い床が広がる。が、俺がズボンのポケットからカードキーを取りだし、それをかざすと床に幾つもの割れ目が浮かび上がった。
それを確認した俺は、その割れ目が広がっている中心に手乗せて軽く押す。すると、床が一センチほど沈んで右にずれていく。
数秒すると、さっきまでは只の床だった場所が地下へ通じる階段に変化したのだ。
俺は急いでその階段を駆け降りる。なぜならば、この階段は十秒経つとさっきの只の床に戻ってしまうからだ。
これは例え後をつけられてここに入る所を見られたとしても、追跡者を入れないようにする為だ。ついでに賽銭箱もちゃんと元の場所に戻るようになっている。
俺は階段を降りた先にある岩戸にさっきとは違うカードキーをかざした。すると、岩戸は見た目よりも素早く開いた。
俺はその先に足を踏み入れた。
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