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一瞬、心臓を鷲掴みにされた感覚に襲われる。完全に気を抜いていたせいもあるが、いきなりの出来事で声を出す事もできなかった。
さっきまで静かに動いていた心臓がバクバクと体中に響き渡る程の音を立て、全身に血液を送り出した。身体中から汗が吹き出し、足は震えてまともに動かせない。
数秒の沈黙を経て、俺はようやく頭を入り口の方に向ける事ができた。
視界の隅から徐々に声の主の姿があらわになっていく。その人物を特定するまでに多少の時間がかかった。
「ミリム……」
俺がようやく発した言葉はなんとも弱々しく、まるで虫が飛んでいるような小さな声だった。
彼女の名前はミリム・ネクロクム。機械街で軍事技術部門を担当している、俺と恋人関係の人物であり、俺以外にこの場所の事を知っていて、かつ自由に出入りできる唯一の人間だ。
実はこの場所を作るにあたって、彼女に手伝って貰った箇所が幾つもある。
そんな彼女が今ここに居る。と言うことは………
「世界の…命令か…?」
俺の情けない声を聞いたミリムは、軽くため息を吐いて口を開く。
「違うわよ、後ろには誰もいない。これは私の独断の行動だから、安心して」
そう言って彼女は
俺に銃口を向けた
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