71人が本棚に入れています
本棚に追加
/93ページ
「もう、どうしてそんなに素直じゃないの? 碧は」
皐月は不機嫌そうに口先を尖らせた。
「二階堂君が好きだって言ってくれれば、私だって全力で協力するのにさぁ?」
「だから、好きとかそういうんじゃないってば」
碧は苦笑いしながら手を横に振った。
そう、あたしの二階堂輝に対する感情は少なくとも恋愛感情ではない。
むしろ真逆の、暗く嫌な感情だ。
彼とは幼い頃からの幼馴染だが、今ではそんな生易しい関係ではなくなってしまった。
でも、それも今日と明日で終わりにする。
本当に些細なことだけれど、あたしにとっては一世一代の“大勝負”だ。
失敗すればもう二度と言葉を交わすチャンスは無くなる。
けれど、成功すればあたしはもう一つの“賭け”に出よう。
チャンスは二日。“勝負”に勝とうが負けようが正直どうでもいい。
もう終わらせてやるんだ。
こんな息苦しい生活を。
たとえ、これによってもう二度と、彼の笑顔を見られなくなってしまったとしても…―――。
碧は、雲ひとつない夏の青空を恨めしそうに睨んだ。
最初のコメントを投稿しよう!