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ほわっ、と嬉しそうに顔をほころばせたあと、はにかんだ咲の瞳が俺を見上げる。
「……ありがとう……」
「ん。」
軽く微笑み返してワイングラスについた泡をすすいでいると、背伸びをした咲の唇が俺の頬に軽く触れた。
「……拓ちゃんのそういうとこ……大好き……」
「なっ……」
咲は顔を真っ赤にしたまま、また食器を洗い始める。
……何、可愛いことしてくれちゃってんの。
どうすんだよ。またドキドキしてきただろ……。
自分の赤くなった顔を気にしながら咲を見ると、咲はこれ以上ないくらい真っ赤になって俯いていて、俺のドキドキにも気づいていないようだ。
……よかった。バレてない。
俺はほっと、胸を撫で下ろした。
……自分からまたキスしてくるなんて、咲も少し酔っ払ってるのかもしれないな……。
それにしても――、
こんなサプライズがあるなら、皿洗いも悪くない。
……食洗機を買うのは、もう少し見合わせようかな……。
耳まで真っ赤になった咲を見てくすりと笑いながら、俺はそんなことを考えていた。
2013/11/7
END
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