お気に入りの時間

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状況を把握できていない俺は、ムッとした声で尋ねる。 「何が可笑しいんだよ。」 「ごめ……だって拓ちゃん、勘違いしてるんだもん。」 「……勘違い?」 「私が素敵だなと思って憧れてるのは、アキラじゃないよ。」 「え、けど……」 「私が言ったのは、あのCM全体の雰囲気のことなの。 仲良さそうに笑い合ってる2人が、すごく自然で……、 2人を見てるだけで、何て言えばいいのかな……すごく幸せな気持ちになるっていうか……」 「……」 「拓ちゃんと私も、よく2人で食器を洗ったり、料理を作ったりするでしょ? だからちょっとだけ、自分達と重ねちゃったりして……、 他人から見たら私達も、あんな風に見えるのかな……」 「……さあ、どうかな……」 咲は恥ずかしそうに頬をピンク色に染めると、まるで秘密を打ち明けるみたいにそっと囁いた。 「私ね、拓ちゃんとキッチンで一緒に何かをするのが、すごく楽しいの。」 「……キッチンで、て皿洗いしたりするだけなのに?」 「うん……あの時間は……私のお気に入りの時間だから……」 「っ……」 予想外の告白に、俺は言葉が見つからない。 ……何だよ、それ……可愛すぎるだろ……。
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