お気に入りの時間

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黙ったままの俺の腕に、咲がそっと触れた。 いつもより少しイタズラな瞳で、咲は俺を見上げてくる。 「……拓ちゃん、もしかしてアキラにヤキモチ妬いちゃった?」 「なっ……」 「……かわいー、拓ちゃん……」 「っ……」 ふふ、と、くすぐったそうに笑うと、咲は触れていた手を離して俺から離れて行ってしまった。 再び店内を物色し始めた咲の後ろ姿を見つめながら、俺はその場に1人立ち尽くす。 「……」 ……当たってるだけに、何も言い返せない……。 ……て言うか俺、今……顔、赤くないかな……。 いつもと逆の状況に、戸惑いと軽い羞恥心が生まれる。 ……くそっ、これじゃいつもと逆じゃないか……。 何で俺が、こんな心配しなくちゃいけないんだよ……。 咲は何事もなかったように、店内の雑貨に目を奪われている。 何だか悔しくて、俺は無邪気なその横顔に、じとっとした視線を送った。
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