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逃げ場を失った咲は、半分泣きそうな表情を浮かべながら、俯いていた顔をあげる。
「……どうしても答えなくちゃダメ?」
「ダメ。」
「……だって……恥ずかしい……」
咲の瞳は、「お願い、言わなくてもいいって言って。」と言わんばかりにゆらゆらと揺れて訴えかけてくる。
……うわ……その顔、ほんとヤバい……。
まるでおねだりするようなその表情が可愛すぎて、俺は理性がふっとびそうになった。
……このまま、押し倒したい……。
そう思う反面、どうしても咲の口から言わせたくて仕方ない。
……こんな風にやたらにこだわったりして、俺もちょっと酔っ払ってるのかもな……。
頭の片隅でそんな風に考えながら、俺は緩みそうになる口元を引き締めて、わざと表情を変えずに言った。
「そんな顔してもダメだよ。」
俺の言葉に、咲の瞳がじわっと潤む。
「ほら、早く言って。」
「……イジワル……」
「答えないと俺、もっとイジワルな事しちゃうかもよ。」
「……」
咲は覚悟を決めたように、きゅっとスカートを握り締めた。
さっきよりも熱っぽい瞳が、真っ直ぐに俺を見つめる。
「……じゃあ……目、閉じてくれる?」
「ん。これでいいだろ?」
仕方ないな、と小さく笑って、俺はそっと瞼を伏せた。
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