お気に入りの時間

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唇を離したあとの息のかかりそうな距離で、咲は目を閉じたまま吐息混じりに呟いた。 「……拓ちゃんのも……すごく甘い……」 ……うわっ……。 恥ずかしくてたまらないって表情を浮かべながら、頬をピンク色に染めて、 咲はとろけそうな甘い声で俺の中の熱を上げていく。 不意打ちのキスの余韻がまだ残っているせいで、頭も体もまだクラクラしていた俺は、咲に何の言葉も返せずにいた。 「……拓ちゃん?」 俺の様子がおかしいのに気づいた咲は、ゆっくりと瞼を上げた。 咲の瞳に、顔を真っ赤にしてカチカチに固まった俺が映る。 「……う…そ……」 咲は驚いたように目を丸くしたあと、くすっと小さく笑った。 咲が余裕なのが面白くなくて、俺はムスッとした顔をして言った。 「何が可笑しいんだよ。」 「……だって拓ちゃん……顔、真っ赤……」 「っ……」 「ふふっ。自分が言えって言ったのに照れるなんて、拓ちゃんかわいー。」 「っ……、キスしろとは言ってないだろ?」 「仕返ししたの。いつも拓ちゃんも、突然キスするから。」 くすくすと楽しそうに笑う咲を、俺は悔しい思いで見つめた。
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