お気に入りの時間

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……くそっ、こんなの絶対におかしい。 俺が、からかって。 咲が、照れて赤くなって。 完全に、俺のペースで。 それが当たり前のはずなのに。 ――俺が咲にからかわれて赤くなるとか……絶対にあり得ない。 このままなんて、絶対に納得できない。 ふ、と小さく息を吐いて呼吸を整えると、俺はニヤリと微笑んで反撃の言葉を口にした。 「認めるよ。さっき確かに俺、すっげードキドキしてた。 咲にキスされたら、突然顔も体も一気に熱くなってきて。 俺の顔、真っ赤だっただろ?」 「うん……」 恥じらうようにコクンと頷いた咲の顔に、俺はそっと手を伸ばした。 頬に手を添えて指先で優しく撫でながら、しっかりと瞳を合わせる。 「……だってさ、あんなに可愛い顔してキスされて、しかもあんなに甘い声で囁かれたら、 ドキッとするに決まってるだろ?」 「え……」 余裕だった咲の顔が、焦った表情に変わった。
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