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部屋とナイトメイドと"私"
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「おかえりなさいませ、ご主人様」
薄っぺらい木製の扉を開くと、そこには愛らしい少女がいた。
「――はっ?」
思わず私は扉を閉める。
そしてじっくりと、見慣れた片開きの扉を眺め回した。
僅かに黒カビの浮かんだ、飴色の木戸。
目線よりもやや高い位置には、トイレットと印字されたプラスチック板が打ち付けられている。
「…………」
間違いない。
我が家の――築四十年のボロアパートのトイレだ。
私は震える手を伸ばすと、もう一度真鍮製のノブを掴んだ。
気合いを入れて捻り、開ける。
「お帰りなさいませ、ご主人様」
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