実は俺

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(あれ?ここ、どこだ?) 真っ暗な闇の中、俺、沖田宗太は立っていた。 自分の姿は寝間着の黒ジャージ。確か自分は眠ったはず。ならば、 (夢か?) 直感的にそう思った。 夢を夢だと言うのもおかしい話だろうか?…どうでもいい。普通に寝ていたかった。 前がぼんやりと明るくなった。じっと見つめているとザッザッと何かが映りだす。 「………」 別に、どうせ夢だ。 見なくてもバチはあたらないだろう。 だけど。 (目が、離せない) 体がその場に縫い付けられ目がしっかりと映像を捉えようとする。 暫くしてハッキリと何かが映りだした。 「っ!」 それは男の集団の姿。 真っ赤な生地に金色の誠の字が輝く旗。水色のような澄みきった空のような羽織り。 「、新撰組…」 自分の口からすんなりと言葉がでた。 そうだ。 これは浅葱に身を包んだ最後の侍たち…。でも何故、自分はそんなことを知ってるんだ?俺は、そんなこと知らない、はず。 でも心臓が有り得ないくらいバクバクしている。こう、リレーのアンカー的な、さ。 次第にその映像が薄れてゆき、違う映像が映った。 「!!!」 吃驚した。 自分が映ったのだ。 しかもさっきの集団、新撰組の羽織りを着こみスラリと長い刀を持って微笑みや薄ら笑いと取れる笑みを浮かべた。 …自分と顔は瓜二つだ。怖いくらいに。 相手の方が髪が長いが、それを抜けばこの男は俺そのもの。 男は口をパクパクと動かした。 「え?なん、だ?」 その男が自分に何か伝えようとしている。必死で男の口元を見る。 生憎!読唇術とかしたことないんで! 「え、と。…ぉ、…き、た…」 おきた 「そ、……そ、う、…じ?」 そうじ おきた そうじ 自分がそう呟くと男は満足そうに微笑み自分を指差した。 「沖田、総司?」 それは、どうやら名前らしい。
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