実は俺

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沖田総司。聞いた刹那に頭が弾けた。…いや爆発なんて、してねぇぞ。 こう、ゆっくりと。 流れるように入ってくる。沖田総司の思い出が。 走馬灯みたいだなぁ…って走馬灯見たことないけども。 目の前の沖田総司を見やる。 真っ暗な闇の中、俺と沖田総司だけが立っている。 「…聞こえる?」 「…おう」 初めて沖田総司の声を聞いた。俺とかなり似ている声だけど若干、相手の方が高い。 推定年齢、二十歳とみた。 「初めまして、だね。私は沖田総司。さっきは声が届かなくて名前が言えなかったんだ。ごめんね」 「あ、いえ。大丈夫、ッスよ」 俺がそう言うと沖田総司は子供みたいに顔を輝かせた。 う、わっ。なんか…可愛いな…。年上相手に可愛いは失礼か。 「えと、沖田、さん」 なんか自分と同じ苗字ってくすぐったいな…。 「ふふ、私のことは総司でいいですよ」 「いやぁ、流石に…」 年上相手に呼び捨て? 勇者か俺は。心の中ではフルネームですがね。悪いか?こんにゃろぉ。 「だって」 「君は私であり、私は君であるのだから」 沖田総司の言葉に首を傾げる。 「どういう…」 「そうだね。単刀直入に言うね。君、沖田宗太君は私、沖田総司の生まれ変わりなんだよ」 思考回路停止。 マジで使うことになろうとは。 「ハハ…。…マジで?」 「あはは~。本当だよ~」 あはは。うふふ。 …。 「…なるほど、だから親近感が」 「そうそう。今更だけど瓜二つだし」 生まれ変わり、かぁ。 そんなこと思ってもみなかったしなぁ。 変な気分だし。 「ありがたく総司と呼ばせて」 「じゃあ、私も宗太で」 「さっきから気になってたけど、なんで名前…」 「言ったでしょ?君は私だって。まぁ、親みたいな感じだよ」 「さいでっか」 ちょっと和やかな空気になった。 「あのね、宗太」 「なんだ?総司」 総司の長い髪が揺れる。え?普通に綺麗なんすが。 「お願いがあるんだ…」 ゴクリと息を呑んだ。 「私ね。新撰組の皆にもう一度。会いたいんだ」 黙って総司の言葉を聞く。 「今ね。ちょうど皆、転生しちゃてるのだから」 カチリと絡まる視線。 「探してほしい。宗太」 「…合点承知」 総司がニコリと笑った。
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