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安いアパート、古びた壁はところどころペンキが剥がれている。
一、二階それぞれ四部屋ずつで、一階に二人、二階には三人と空き部屋だらけである。
俺はそんなオンボロアパートの二階の部屋に住んでいる。
普段あまり外へは出ない、出る時は学校の時とバイトの時くらいだ。
バイトは学校で禁止されているが、まぁばれなければ問題ない。
家賃も払わないといけないし、何より家にいても暇なのだ。
「そらーおそいぞー!」
下から聞こえる声、既に下に降りている。
「速いなぁ。」
俺はワザとゆっくり歩いて、チビッコの元へと向かう。
普段は一分もかからずに降りれるのだが、今回は五分もかけて降りた。
落ち着きのないチビッコなら、こんだけ待たされたら、きっとこう言う。
おそいわー、もうつまらん。
「足けがしてんのかー?のろすぎやわー。」
そうだよな、これで諦めたら苦労してないよな。
「あんま遠くには行かないからな、いいか?わかったか?」
「おう。」
もう少し女の子らしく喋れや。
イヤ待てよ、この子なんでこんな言葉遣いなんだ?
親は、いるのか?
言葉遣いとか、話し方とか教えられなかったのか?
無邪気にはしゃぐ少女は、空のそんな疑問など知らずに、どんどん先へと走って行く。
何気なく聞いてみよう。
俺は足速に、チビッコを追う、目的地は大体わかる。
子供の行きたい所なんてすぐ分かる。
俺もこんな感じだったのかな、そんな事を思いながら、チビッコの小さな背中を追った。
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