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上弦の半月が西の空にあるけど、その光に消されることなく、金星のように黄金に輝いている。
でも、金星じゃない。金星は地球より内側、太陽側にある内惑星だから、今の時間に見ることは出来ない。
「木星? 惑星なのか?」
遠藤君がびっくりしたのか、黒縁眼鏡の奥の瞳を丸くする。
「うん。惑星は動きが不規則だから、星座早見盤には載ってないんだ」
僕はそう言いながら、持っている望遠鏡を構える。
口径6センチの小型天体望遠鏡だ。
前はもっと大きい望遠鏡を持っていたんだけど、僕の不注意で壊してしまった。
おばあちゃんにもう一度同じものをお願いするのも、叔父さん叔母さんに買ってもらうのも申し訳なくて、貯めたお小遣で安い望遠鏡を買った。
大きいやつよりしっかりは見えないけど、小さいから寮にも持ち込めたし、こうやって天体観測も出来るし、十分だと思う。
レンズの中に、木星が現れた。
縞模様。よく天体写真集で見る赤いホクロのような大赤斑までは見えないけど。
小さいけど、遠藤君と眞柴君、気に入ってくれるといいなぁ。
「見えるよ」
僕がそう言うと、遠藤君の顔がぱあっと明るくなった。
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