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口径6センチの望遠鏡になると重くて、三脚が必要になってくる。
月はともかく、惑星を見るには手ブレがあると難しい。
でも、今は三脚なしでもそれなりに固定していられるようになってきた。
実技の授業で、小型望遠鏡より重い小銃を扱ってるおかげかもしれない。
僕は、望遠鏡のレンズ位置を固定したまま交代した。
遠藤君が覗き込む。
「うわ、すげえ、しましま!」
よかった、気に入ってもらえたみたいだ。
写真で見るみたいにくっきりしてない、って言われなくてよかった。
「長太郎が終わったら、僕にも見せてよ」
と眞柴君が僕に笑いかける。
僕は頷いた。
すげー、すげーと遠藤君の声が屋上に響き渡る。
「長太郎、静かにしろよ。騒がないって約束で屋上許可してもらってるんだからさ」
眞柴君が注意すると、遠藤君はこっちを見て、「そうだった、ヤベ」と舌を出した。
それから再び望遠鏡を覗き込む。
「あ、消えた」
どうやら、ずれてしまったらしい。
一度視界から逃してしまうと、惑星は月より捉えにくい。
特に、慣れていない人には難しい。
遠藤君は、キョロキョロと望遠鏡をスイングさせていた。
もう一度セットしようか、と僕が言おうとしたら、遠藤君の動きが止まった。
見つけ出せたのかな?
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