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「月だ」
望遠鏡に映し出されたのは、木星じゃなくて月だったらしい。
「僕も見たい」
眞柴君がそう言って、遠藤君が望遠鏡を渡す。
眞柴君もすぐに月を見つけたみたいだった。
「すごいな」
眞柴君が声を出す。
「撃ち落とせそうだよな」
と、遠藤君が肉眼で月を見ながら言う。
「でも、望遠鏡で見るって変な感覚だよなあ。本当はあんなに遠いのに、近くに見えるなんてなあ。
距離がどっかにいっちまったみたいだ」
……うん。
三年前、お父さんとお母さんが死んだ時、おばあちゃんは「二人は星になったのよ」って言った。
僕はもう十歳だったし、人間が星になるなんて信じてたわけじゃない。
でも、夜、眠れなくて星を見ていたら、星と星の間の暗闇を見ていたら、お父さんとお母さんは本当にどこかにいるんじゃないかって気がしてきた。
宇宙は広くて謎に満ちてるから、何が起こっても不思議じゃない。
もしかしたら宇宙のどこかにパラレルワールドがあって、地球で死んだ人がそこで生きてるかもしれない。
遠い星の光が地球に届くのに、何年も何十年もかかる。
地球から遠ければ遠いほど、何百年も、何千年も。
今見ている星の光は、僕らが生まれる前のものだ。
その距離を縮めて縮めてなくしていけば、タイムマシンみたいに過去に行けるかもしれない。
星空を見ていると、そんな気分になるんだ。
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