0人が本棚に入れています
本棚に追加
『 ねえ?もし、私が『人』ではないとしたらどうする?』
カラカラと心地よい下駄音を鳴らしながら僕の前を歩く
とても美しい、僕の大切な人。
『宵闇の中でしか貴方と会わない…そんな女、とても怪しいでしょう?』
振り向いた彼女の声は少女のように弾んでいたけれど、
淡い提灯の光の中では表情を読み取る事は出来ない。
『貴方と出会ったのもこの橋で。一夜の別れもこの橋まで。
物の怪と言われても仕方のない事ね』
そうだね、
陽の下に君は出てきてはくれないのだから。
分かっているよ、君が言いたい事。
僕は気づいてしまっているから。
『本当に私…』
『夏が来るね』
僕は彼女の言葉を遮って、橋の欄干から川面を覗き込む。
あと数日かな。
この関係で彼女と会えるのも。
『また、来るよ。今度は贈り物を持って。』
最初のコメントを投稿しよう!