はじまり

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はじまり

薄暗い通路。湿っぽい風が時折、吹き抜けて行く。特に目に付く物はない殺風景なごく普通の通路。 通路に一定の間隔でぶら下がっている照明は、ゆらゆらとそれに吹かれて揺れていた。 その通路に一人の男が立っている。片足の裏を壁に付け、背中も壁につけて寄りかかる。手はポケットの中に入れて、顔だけは外に向けてボンヤリとそこにいる。 何をするわけでもない。短い呼吸を静かに繰り返して、息を殺してそこにいるだけ。たまに目を瞑り上を向く。 肩には小さなショルダーバックが巻きつけられ、腰にも一つバックがある。タイトなTシャツの首回りは彼の汗で少し濡れていた。一つ息を吐くと少し緊張感が増す。 妙な感覚だ。
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