自覚

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何アイツ、何であんな不機嫌な顔してんの? 俺なにもしてないけど。  負けじと睨み返していると、ふいっと顔を逸らされ校舎へと入って行った。 一体何だったんだ、彼の視線にいまいち腑に落ちず自分も教室へと戻る。 授業中も頭の中で、梨紗ちゃんと宮原の仲の良さそうな光景が頭をよぎる。  正直、苛々したし会話も気になる、だけど一番気になるのは宮原の視線。 あれは……獰猛な目をしていた。  友達とかそういう生温い感じではないだろう。多分あいつは……。 「梨紗ちゃんが……好き……」 口にしてしまえば余計に苛立ちが募る。授業中だから声のボリュームは落としていたが、宮原が梨紗ちゃんを好いているかもしれない、そう考えただけで頭を掻き毟りたくなる。 別に良いじゃん、付き合えれば俺は満足するし宮原もその後に梨紗ちゃんと付き合えば良い。  ただ今はこの苛つきを抑える術が分からなかった。 授業が終わり、ユズと何となく過ごしているとアイツが来た。  ーー宮原。 名前を呼ばれ、億劫になりながらも後を付いて行く。  身長は同じくらい、体型は宮原の方がガッチリしている。そんなくだらない事を考えていた。 一目のつかない場所に着くと、宮原は開口一番こう切り出す。 「藍川に付き纏うな」 「……梨紗ちゃんが言ったの」 俺が名前で呼んでいるのも気に食わないのか、ピクリと眉が上がった。  梨紗ちゃんがそんな事を言ったなんて思っていない。宮原が離したいだけだ。 「宮原さー、人の交友関係にまで口突っ込んでくんの? 彼氏なわけ?」 「……いや違う、藍川は妹みたいな存在だ」 「妹? 同い年なのに?」 そう問い掛けた瞬間、呆れたような顔をされた。 「道理で先輩に対しての言葉遣いがなってないと思った。同い年なわけがないだろう……三年だ」 人気なのは分かっていたけど、学年までは把握していなかった。  そうだ、バスケ部の主将なのに同い年なはずがない。一年が三年にタメ口をきくなんて、体育会系に所属してたら確実に怒られてた。 「すみませんでした。生意気な事言って」 「まぁ、知らなかったんだろう。気にしてない」 俺が謝った事に少しだけ驚いた表情をしたが、すぐに表情は戻った。
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