序にかえて

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 ねぬり。  校庭の土に亀裂が走り、隙間から重油に似たどす黒い粘液状の何かが音を立ててにじみ出る。  にじみ出た粘液はぶるぶると震えながら腕の形をとり、地面に突いた手から引きずられるように全身が姿を現す。  闇のごとき漆黒は、月の光さえも吸収してなお黒い。  不完全に人間を模した姿形は、むしろ人間へ対する冒涜にも見える。
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