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思い出すのは じいちゃん家の近くにあった、小さな公園。
「ねぇ迷子?」
雨に濡れたまま泣いている黒髪の少女は、まだ幼かった俺よりわずかに小さかった。
その足元には開かれたままの傘が転がっている。
ミントグリーンの、可愛い傘だ。
「家どこ?」
俺がそう尋ねても、少女は泣いたまま首を振るだけで答えない。
「泣くなよ。僕が一緒に探してあげるから」
持っていた傘に入れてあげると、少女は涙で濡れた大きな黒目で俺を見た。
水色のワンピースとピンクの長靴は、雨でびしょびしょだ。
「コレやるから、泣くなって」
じいちゃんからもらった甘い香りのするドロップをポケットから取り出し、俺はその少女に差し出した。
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