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去り際に「稔李さん、また遊んでね」と言ってくれたことが嬉しくて、
私はまたほわんと顔の締まりをなくしてしまいました。
妹さんが私の名前を覚えてくれた。
それだけで、今日は大きな収穫だと言えるでしょう。
「先輩、今日はありがとうございました」
先輩からの帰り道、駅まで先輩が送ってくれるというので一緒に歩きながら、私は深々とお礼を言いました。
「すっごく幸せな1日でした。私、一生忘れません」
「おーげさ」
ハハ、と笑って、先輩はさりげなく私の手を握ってくれました。
夕陽に伸びる二人の影が穏やかに揺れて、その温もりにまた幸せを感じてしまいます。
「また来いよ。妹も楽しそうだったし、遊んでやって」
「本当ですか?」
「うん。あいつもカラオケ好きみたいだから一緒に行ってみる?」
「うわぁ、行きたいです」
「……。ふっ」
目を輝かせた私を見て、先輩は可笑しそうに顔を背けました。
「デートで妹を同伴させたら普通怒るって」
「えっ。あ、今の怒る場面でしたか? だって単純に嬉しくて……二人きりもいいけど大勢も楽しいし」
わたわたと焦る私を見て先輩がまた笑います。
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