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ねぇ、覚えてる?
心地良い風が桜の花びらと共に、春の訪れを知らせてたあの日。
二人でベンチに腰かけて、ずっと桜の木を眺めてたよね。
私は途中で飽きちゃって、ふとアナタを見たら、頭にいっぱい花びらついててさ。
面白くてつい笑っちゃったよね。
アナタは恥ずかしそうに照れて、ちょっとふて腐れてたけど、本当はあの日、アナタの桜を見つめるその真っ直ぐな横顔に、凄く胸がドキドキしてた。
ねぇ、覚えてる?
桜も枯れて、うるさいくらいに蝉が鳴き出した蒸し暑いあの夜の日。
急に扇風機が回らなくなっちゃって、仕方ないからウチワで扇ぎっこし合ったよね。
面倒くさがり屋な私は、途中で扇ぐの止めて寝てしまったよね。
本当は寝たフリをしてただけなんだけど、私が眠りについた後もずっと、ウチワで扇いでくれてた優しいアナタを、しみじみ好きだって思ったよ。
ねぇ、覚えてる?
少し肌寒い風が吹く中、イチョウの葉を踏み締めながら歩いた、あの並木道。
慣れないブーツで足が痛いって言ったら、しょうがないなって言いながらも、ぶっきらぼうにおんぶしてくれたよね。
本当はアナタともっとくっつきたくて、足が痛いって嘘ついちゃったんだ。
ねぇ、覚えてる?
外はどこもかしこも雪景色で、吐く息を真っ白く染める聖なる夜の日。
安いケーキに安いシャンパン、それに安いプレゼントでごめんって言いながら、私にネックレスをそっと付けてくれたよね。
ツリーも飾って無いし、ブランド物のネックレスでも無かったけれど、質素なイヴの中に、私は確かに愛を感じたよ。
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