季節外れの‥‥8

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上着のポケットから手紙を二枚取り出す。 一枚づつ目の前に並べて、 「‥なら、二人に話せなアカンな。まだ、早いかなって思たけど‥」 そう言ってからいつもの優しい笑顔を浮かべる。 「これは、お母さんからの手紙なんや。徳一が大事な人と出逢った時、‥それでこっちが大事な人の分‥‥内容は、いつもと同じでまだお母さんしか知らん。どっちも読む覚悟があるンやったら、渡しとく‥‥‥‥どうする?」 二人が顔を見合わす。 「読む覚悟‥ってゆうたら尻込みするか? 多分、これからも色んな人と出会って別れて‥を繰り返すと思う。そのまま今の関係が続くとは、誰にも保証はでけへん。それでも、これからも二人寄り添って行きたいって思ってるのやったら‥」 静かに淡々と話す。 「‥僕はきっと大丈夫です。まだまだ、子供やけど徳一と一緒に‥‥居りたい。もし、離れる事があったとしても、僕は友達としてでも傍に居って見守ってあげたい‥‥」 何故か、先生の顔を思い出した。 痛いほど先生の気持ちがわかる気がした。 はじめて会った時、何故先生と自分がダブってみえたのか、 《ただ、傍に居りたい。逢いたい‥》それが相手とどんな関係だろうと‥‥ 「オヤジ、俺もずっと一緒に居りたい。ただそれだけやねん。多分、迷惑かけると思う。だけど義行とこの間から少しづつ話して確信してん。 義行を俺は信じる。」 満足そうに、二人を見て微笑む。 「まぁ、迷惑やとは思わんわ。子供は親に心配かけるもンやし、親は子供を護るもンや。‥‥取り敢えず、手紙はどうする?今、決めんでも、二人で頃合いを見計らってから読んでもええよ。」
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