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いきなり黙り込んだ俺に
「オヤジへの手紙はないン?」
「へっ?」
予期せぬ言葉に声が裏返る。
「自由にしたってな‥って事は、オヤジを俺のお守りから解放したげてって意味やんな。オヤジ‥ええ人居るンやろ?」
「‥」答えようが無い。
「謝らなアカンのやけど、俺オヤジの日記見てン。どんな人なン?」
双眸が歪む。
「‥見たもんはしゃぁないな。‥‥義行も居るし少し話しとこか。そやないと、話が見えんわな。それに多分、俺と徳一がホンマの親子や無いから義行も要らん心配するんやろし‥まぁ俺、まだ30やしな‥」
怒る訳でもなく、諦めた感じで話し出す。
「おじさん、やっぱり若かったんや。そうやないかって思てたンやけど何で隠してたン?」
フッと笑って、徳一が変な眼でみられるやン‥と呟く。
「なんでなん?」
「逆算してみ、俺が14-5のときの子供になるんやで、パッと親子や無いってゆわれるやン。」
徳一の方を見て、
「いつか徳一にも話したと思し、きっとお母さんの手紙に書いてあったと思うけど‥俺と先輩の結婚って男女間のものやなく、徳一を護る為なんよ。」
そう言って話始めた。
‥‥‥
徳一のお母さんは職場の先輩やねん。徳一が五つの時に出会って、コイツが俺に凄くなついてン。
先輩の家に寄せてもろた時にサッカーとか、キャッチボールなんかして遊んでた。
「そりゃもう、可愛いかったで。」と、目を細くして笑う。飲みに連れてってもろた時はいつも徳一の話を訊いた。
「うちの子な、あんたが父親やったらええのに‥やって。私に内緒で悪い事を教えてるやろ?」
「止めてください。その、圧!ムッチャ恐い。徳一君はええけど先輩は無理、勘弁してー!」
いつもそんな風やった。
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