季節外れの‥‥9

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煙草の火を消して少し離れたバス停のベンチに座る。 ここから見るコンビニはまるでドールハウスのようで俺の手にすっぽりと入りそうだ。 駅に電車が着く度に顔をあげて降りてくる人波を見つめる。 ‥なんやねんな、そこまでして俺に逢ってどうすんねん。 嬉しくてが目頭がアツくなる。 吐く息が白いのも寒さも感じずにずっと、アイツを見つめてた。 どのくらい時間が経ったのだろう。アイツが時計を見て動き出す。 9時30分を少し回った、 ‥そっか、帰るンやな。俺の知らン場所へ‥ ‥待ってる人が居る暖かい場所へ‥ コンビニから出て煙草に火をつけて、ゆっくりと歩き出す。 その後ろをフラフラと無意識について行く。 疎らな人影が途切れて、人通りの無い路地を歩く。 周りは静かでこの世界に井本と俺だけが存在しているような錯覚を覚える。 声をかければ届く距離にいる。 前を歩く事アイツとおんなじように、ポケットに手を突っ込んで、煙草をくわえてゆっくり歩く。 ‥いつも後ろ姿ばっかりや、 ‥これからもう、隣に並んで歩く事なんか無いんやろな‥ ‥昔みたいに、遅れて歩く俺に気付くなんて事も。 後もう少しだけ、‥次の角で終わりにするから。せやないと、まるまるストーカーやんな。 角で立ち止まり、背中を見送る。 前から車が路地を走り抜ける。 ライトに照らされたアイツが後ろを振り向く‥‥ ライトに照らされた俺を見てる。 逆光で表情が見えない。 映画のワンシーンのように駆け出し、今、俺の目の前に立っている。
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