44人が本棚に入れています
本棚に追加
それだけは、忘れんとってや‥‥そう言って、唇が重なる。
押し退けて身体を離すが、再度重ねられて壁に押しやられる。
力が抜け落ち固く閉じた口が薄く開く。何度も角度を変え口腔深くまさぐられ、舌を絡めとられる。
まるで俺を抱く代わりかのように口腔を犯すような熱いキス‥‥
「‥んっ、‥ンはッァ‥‥ヤッ、ンッ‥」
途切れ途切れ声が吐息と一緒に零れる。
涙が溢れて止まらない。
嫌悪感じゃなく、
嬉しくて、切なくて、愛しくて、
抱き締めて欲しくて胸が痛む。‥
けど、井本は涙に気付き
「‥悪かった、ごめん‥‥こんなん、キスやないな。‥‥ただの暴力やんな‥‥けど、忘れんとってや‥恨んでくれててもかまへんから、俺を憎んでてもかまへんから‥‥お前の心に居れるんやったら、それでええから‥‥もう、しつこに付きまとわんから‥」
そう言って俺を置いて行ってしまう。最後に俺の涙を拭うように目元に優しくキスして‥‥
せやから、笑っててや‥‥そうゆうて、淋しげに頬笑んだ‥
後ろ姿を見送って、今度は悲しみの涙が溢れて止まらない。‥
‥違うんや、待ってや。
言葉に出来ない想いが胸を締め付け口に出せない。
‥俺はアホや、今、引きとめらなもう逢えんようになる‥
追い込まれたふりして、追い込んだんは俺や‥
傷付いたふりして、傷付けたんは俺や‥
‥‥最低や!!
‥‥‥。
‥‥。
‥もう逢えん、あぁ‥‥、きっとアカン
もとには戻らへん‥‥
‥最低や!傷付けてしもた
誰よりも、大切やったアイツを‥‥
俺には、アイツしかおらんのに‥‥
電柱の影に踞って、暫く茫然としていた。‥‥
最初のコメントを投稿しよう!