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俺は、一度も振り返らず歩いた。
‥しつこに付きまとわんから‥ゆうてしもた。
仕方ない事やねん、泣かせた無いんや、笑ってて欲しいねん。
目尻に皺が寄って目を細めた顔‥‥
幸せそな、クシャクシャの笑顔をしてて欲しいねん。
玄関の扉を開けてそのままキッチンに行き、水を飲む。
「おじさん?お帰り、‥どうしたん、」
「ん?あぁ‥ただいま‥イヤ、ちょっと悪酔いや‥」
心配そな義行に悟られんように、
「‥上手い事いったか?」と、笑って肩に手を置く。
「///‥‥」
照れて何も言えずにいる義行に、
「ここ‥‥ついてんで‥」
鎖骨の辺りを指さしフッと笑う。
「/// うっ、止めてや‥。」
「ハハハ、早ょ戻らな徳一が拗ねんで。‥俺、今日は下で寝るし‥おやすみ。」
二階に上がる足音を聞きながら俺は、先輩の写真の前に座った。
‥‥‥
ごめん、今夜だけでええから‥泣いてもかまへんかな、
アカンねん‥涙が流れてくんねん、なんでかな‥胸が苦しいねん‥
俺のした事は全部アイツを苦しめてだけやったんや‥って思ったら、付きまとわんからってゆうてしもた
もう、笑った顔なんか思い出されへんねん‥
目を閉じて浮かぶんは、
‥無理した歪んだ笑顔泣きそな涙の溜めた自傷気味の笑顔
俺を責める瞳‥‥
そこには俺が少しも映って無いんや‥
泣き顔だけが俺を見つめてる。
ずっと傍に居って護ってやりたかった。
最後の最後まで、傷付けて残酷な事をしてしもた。
松の木のように力尽きたんやない。ただ、この場所でアイツを待ってたんや‥‥
全部、自分勝手な思い込みやったんやな‥
いつかまた、笑って逢えるやろか?
なぁ、先輩。やっぱり‥‥ツラいわ‥
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