季節外れの‥‥10

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気が付けば朝になっていた。 一晩中泣き明かして瞼が腫れぼったい。 二日酔いの頭で、昨夜の残骸を片付ける。 ‥どんなけ飲んだんや‥空しかあらへん。 変に身体のあちこちが軋む。膝を抱えて眠ったせいだろう。 はぁー‥‥、溜め息をついてぼんやり朝日を眺める。 ‥どんなに落ち込んでても、朝は来るんやな。‥  どんなに逃げ出したくても、現実からは逃げられへんしな‥ はぁー‥、もう一度溜め息をついて ‥なんて顔をしてんやろ。  仕事に行きたないなぁ。 朝御飯も食べる気がせず走りにいく気にもならない。 携帯は、ずっと無言のままで結局(また、明日)も《おはよう》もなかった。 気付いた時には取り戻せない、事の重大さを今になって感じた。 一度失うと二度と手には入らない‥‥ と、いう現実を‥ ‥あぁ、そういや《さよなら》もなかったな‥ 他人事のように呟く。 大事な宝物を自分からバラバラに壊した。‥‥ けどな、まだな‥‥ お前だけをどこまでも‥ 愛してんねんや‥‥ こうしてても、携帯が鳴って 《おはよう》ッて声が‥‥‥ ‥訊こえるわけあらへんやろ。 やっぱ、俺はアホやなぁ、‥‥ これから‥‥どうしたらええんやろか? 鏡に映った唇を指でなぞる。 何で、あんなキスしたんや‥ 思い出すだけで、心が軋む。 同時に、俺の事を好きで居っててくれたンや‥と嬉しくて胸が苦しくなる。 ‥アホやなぁ、まだ‥期待してる俺が居るわ‥‥
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