季節外れの‥‥10

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天気の良い日曜の朝。 アルバムを引っ張り出して、バラバラに砕いてしまった宝物をかき集める。 いっつもアイツは笑って隣にいた。 ‥やっぱり、俺はお前が居ったからしあわせやった。 カレンダーをみると、図らずも明日はアイツの誕生日‥‥ ‥30歳になんやな、俺と同い年。 丁度ええ区切りや‥ そんな事を思いながら部屋を掃除して、昼前にはジョギングに出かける。 今日はコースを変えて、駅前から川沿い、学校を抜けて神社まで走る。 石段をかけ登り、息を整えて本殿へ‥ ソッと手を合わして、 ‥井本が幸せに笑って過ごせますように ‥決して後ろを振り返らずに進んでいけますように 純粋に願う。 懐かしく感じる街並みを眺め、学校に視線を落とす。 俺達が引き合うように出逢って、すれ違っていった場所。 ただひたすらに、アイツの背中を追い掛け続けた時間がそこにはある。 いつも俺たちは、そこに居った。 いくつもの想いが甦っては心を過る。 ‥ホンマに俺にはアイツとの思い出しかないんやな。 今も昔も‥どんなけ惚れてンねんな、 照れたような笑いが口元に浮かぶ。 今、座っている場所でさえ、やさしさに包まれた想いで溢れている。 ‥なかった事になんかでけへんて、ましてや忘れる事なんか‥ ‥絶対に無理や。 それやったら、この想い全部抱えたまんまで歩いていこか。 全部引っ括めて俺やから‥嘘はつかれへん。 帰り際にもう一度手を合わして、 ‥俺はもう迷わへん。幸せやから‥
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