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帰宅した俺はまだお昼を食べていないことに気付きパスタをゆで始めた。
市販のソースを絡めて適当に済ましながら、レシピを見る。
頭の中で何度もシュミレーションを繰り返した。
悪戦苦闘し焼き上がったのは既に夕方も過ぎ、7時を回っていた。
「何が簡単やねんな。」
悪態をつきながら後片付けを済まし、部屋中の甘い香りに包まれる。
換気がてらベランダの窓を開けて、煙草に火をつける。
ンッフフ‥笑いが口元に浮かぶ。
ややなぁ、乙女通り越してオカマやンか‥
一本吸い終えて窓を閉める。
テーブルの上にはチョコのパウンドケーキ。
明日はこれで一人でお祝いしようか。
そんな事を思いながら、よっしゃ!と気合いを入れる。
携帯を手にして‥まだ仄かに甘い香りがする部屋から電話をかける。
明日からの、友達としての一歩の為に‥‥
トゥルルー‥トゥルルー‥
無機質な呼び出し音。
トゥルルー‥トゥルルー‥
まだ切るな、俺。大丈夫や。出てくれるから。
トゥルルー‥‥カチャ
「‥ふっ、藤原‥‥?」驚いた声‥けれども少し嬉しそに響く。
「おん‥‥今、電話大丈夫か?」
恐る恐る尋ねる。
「あぁ‥誰もおらん。‥‥一昨日の晩は悪かった。‥‥」
アイツがひとりなのに安堵する。
‥落ち着け、落ち着け。ゆっくりと話すンや‥‥
「イヤ、俺が言い過ぎたから。‥ほんでな‥聞いて欲しいねん。勝手やけどな、俺‥‥色々考えてンや‥‥俺、俺な、‥」
「‥‥なぁ、話長なるんやったら、会わへんか?」
「えっ?‥‥」
突然の誘いに返事が出来ない。
「俺、明日は誕生日やン‥プレゼント代わりに会ってくれへんか。店でも、道端でも何処でもかまへん。‥‥顔見て話訊きたい。」
まるで耳元で囁かれるような感覚に、思わず口から吐息が洩れそうになる。
「なぁ‥イヤか?‥‥」
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