季節外れの‥‥10

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幸せな時間は流れ落ちた。 これから友達として始めるには残酷な程の甘い時間だった。‥‥ 解っていても止める事なんか出来なかった‥‥ キスだけの、幸せな時間‥ 時計を見て12時になる前に井本はしていたネックレスを外す。 小さなリングが二つ‥ よくみると、名前が刻印してある。 ‥TAKAFUMI‥KAZUHIRO‥ 二つともに同じ文字 フワッと微笑み、一つ外して俺の手に‥ 「持っててや、大切な想いやから‥俺が結婚した時にもらったンや。‥‥」 「えっ?なんで‥‥?誰からなん?‥‥」 全く意味がわからない。 ‥なんで俺の名前が刻印されてんねん。  俺とお前の関係を知ってての事やんな。 「‥訊きたいか?‥」 真剣な眼差しで問いかける。 ‥わからへん、けど訊いたら‥ なにもゆえずに手のひらのリングを見つめる。 「訊きたなったら教えたるから‥‥後、どうしても友達で居れんようになった時は、話させてや。‥‥それまで、俺もなんもゆわへん。」 優しく髪を撫で、 「今日は甘い薫りするな‥ケーキのせいやろか?‥‥」 そう言って目尻にキスを落とす。 目を細め感触をたしかめてから、 「‥もう時間かな?‥‥今日はありがとう。‥また、」 ゆっくり立ち上がり、時計を見る。 「‥せやな、時間やな。‥ハァ‥俺もありがとう。ケーキ貰って帰ってもええか?‥ 」 「アホか‥そんなんアカンに決まってるやろ。」 「ええ、旨かったのに‥また、焼いてや。」 「‥キショイ事ゆうなや。家で焼いてもらいや。」 笑いあいながら、友達ゴッコのような会話を交わす。 帰っていく背中を見つめ、何故か涙は出なかった。 ‥やって、別れやないから。俺とお前の始まりやと思ってるから。 ありがと、 ‥今度旨い酒でも飲もうや。
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