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幸せな時間は流れ落ちた。
これから友達として始めるには残酷な程の甘い時間だった。‥‥
解っていても止める事なんか出来なかった‥‥
キスだけの、幸せな時間‥
時計を見て12時になる前に井本はしていたネックレスを外す。
小さなリングが二つ‥
よくみると、名前が刻印してある。
‥TAKAFUMI‥KAZUHIRO‥
二つともに同じ文字
フワッと微笑み、一つ外して俺の手に‥
「持っててや、大切な想いやから‥俺が結婚した時にもらったンや。‥‥」
「えっ?なんで‥‥?誰からなん?‥‥」
全く意味がわからない。
‥なんで俺の名前が刻印されてんねん。
俺とお前の関係を知ってての事やんな。
「‥訊きたいか?‥」
真剣な眼差しで問いかける。
‥わからへん、けど訊いたら‥
なにもゆえずに手のひらのリングを見つめる。
「訊きたなったら教えたるから‥‥後、どうしても友達で居れんようになった時は、話させてや。‥‥それまで、俺もなんもゆわへん。」
優しく髪を撫で、
「今日は甘い薫りするな‥ケーキのせいやろか?‥‥」
そう言って目尻にキスを落とす。
目を細め感触をたしかめてから、
「‥もう時間かな?‥‥今日はありがとう。‥また、」
ゆっくり立ち上がり、時計を見る。
「‥せやな、時間やな。‥ハァ‥俺もありがとう。ケーキ貰って帰ってもええか?‥ 」
「アホか‥そんなんアカンに決まってるやろ。」
「ええ、旨かったのに‥また、焼いてや。」
「‥キショイ事ゆうなや。家で焼いてもらいや。」
笑いあいながら、友達ゴッコのような会話を交わす。
帰っていく背中を見つめ、何故か涙は出なかった。
‥やって、別れやないから。俺とお前の始まりやと思ってるから。
ありがと、
‥今度旨い酒でも飲もうや。
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