季節外れの‥‥11

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中々、風呂から出てこないのに痺れを切らして徳一が様子を見に行く。 「‥オヤジ?ソロソロでたら?‥」 「‥ぉん、」 水音がして出てくる気配がする。 少し、外から様子を窺ってからリビングに戻る。 間をおいて、オヤジが出てくる。 瞼がまだ腫れていて赤い。 「おじさん、ちょっとでもお腹にいれなアカンで。」 「‥悪いけど食べる気せんから‥‥」 はぁー‥‥とため息をつくと天井を見つめている。 「‥オヤジ?‥何かあったン?‥」 恐る恐る尋ねてくる。 「‥ン?‥なんもないで。」 取って付けたような平静さで答える。 けど、 「おじさん、泣いてるやン‥」 義行に言われて自分が泣いてる事に初めて気付く。 タオルで顔を隠しながら、 「‥なんも、ないから‥‥」平静を保とうとするが、声が震える。 徳一が横に座り、 「話してや‥隠し事はなしやン。オヤジ、俺の相談事の時にいっつもゆうてるやん‥‥」 「‥ぉん、けどな‥‥ゆえん。」 「オヤジ‥待ってた人となんかあったンやろ。」 肩がビクッと震えて、涙がボタボタ落ちる。 義行が黙って席を外そうとすると、 「‥義行、ビール持ってきてや。」 「‥!‥」 いきなり言われて徳一と顔を見合わせる。 「空きッ腹にビールはアカンで。先に食べてくれたら取ってくる。」 目の前におじやを差し出す。 じっと見ていたが、諦めたようにお茶碗を手に取り食べ始める。 それを見届けてビールを持ってくる。 「ありがと‥‥」 「おじさん、徳一には話してあげてや。僕おったら話しにくいやろうから、席を外しとくし。」 黙って首を横に振り、 「義行も家族と一緒やから気にしぃなや‥‥」 気持ちが落ち着いてきたのかいつもの口調に戻る。
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