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ゆっくりとビールを飲み、ため息をつく。
話始めるのを躊躇っていたが、
不意に、
「俺な、焦りすぎて‥‥それで‥傷付けてしもてん。‥‥ただ、そんなけの事や‥‥」
俺がいきなり話始めたので二人に緊張が走る。
「話なんてなんもでけへんかった。‥‥訊きたないって。‥‥」
ポツリポツリ話を切り出す。
二人共黙って訊いている。
「偶々、帰り道でおぅたんよ。つい、嬉しくて昔みたいに‥俺ん家寄ってや、すぐそこやから‥ってゆうたら、キレられた‥‥
逢われへん状況を作ったんは、お前やろ‥‥
最初に突き放したんは、お前やろ‥‥
って、泣かれてしもた‥‥
誰よりも護りたかったアイツを傷付けてたんは、俺やった事に初めて気付いた。
‥‥アホやろ‥」
また、一口ビールを口にする。
「‥おじさん、相手の人は誰なん?」
ゆわれへんとでも言いたげに首を横に振る。
「‥‥俺な、アイツが幸せやったら俺を憎んでても恨んでてもかまへんねん。
‥‥けどな、アイツが今 、何してどんな暮らししてるとか幸せなんかとかも‥何も訊けんかってん。
ただ、俺を拒んでてん。
‥前に逢った時に忘れられへん、逢いたかってん‥ってゆうてたから、俺‥‥舞い上がっててん。
アイツの気持ちなんか全然考えてなかってん。‥」
視線はずっと手に持ったビールを見つめている。
「おじさん‥」何か言いたげな義行を見て、
「アホやろ‥」と、一言呟いてからビールをあおる。
今まで黙って訊いていた徳一が涙目になりながら、
「オヤジ、それって全部俺のせいやん‥‥なぁ、教えてや、その人の事。‥俺。会って誤解解いてくる!」
「ちゃうよ。徳一のせいやない。全部、俺が悪いねん。‥‥最後の最後まで傷付けて、泣かせたんは俺やねん。‥‥」
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