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しゃぁない事や‥‥
そう言って話を切り上げた。
それから静かにビールを飲んでいた。つい、いつもの癖で首のネックレスのリングをいじる。
アイツの事を考えている時の癖‥‥‥
それを見た徳一が、
「渡されへんかったんや‥‥」
「‥ン?‥あぁ、‥このまんまかな‥‥俺、もう寝るわ。‥おやすみ。‥‥話はもうおしまいや。じゃ‥」
そう言って二階の部屋にこもる。
オヤジが部屋に行った後、義行が
「徳一?リングって何なん‥」
「昔からずっとしてんやけど‥てっきりお母さんとのやと思ってたんや、けど待ってる人とのみたいやねン‥」
「そうなんや‥」
「なぁ‥オヤジうまくいくかな‥‥」心配そに、上目使いで訊いてくる。
不安を取り除くように髪を梳きながら、
「話だけじゃな、‥相手の人もまだ好きやと思うけどおじさん結婚してるから、‥‥話し合いが出来たら解決すると思うけど、」
「やっぱり俺のせいやんな‥‥」
項垂れる徳一を抱き締めて、
「ちゃうよ。多分ちょっとした行き違いや。‥‥きっと二人共優し過ぎんねん。相手の事想い過ぎてンねんや。」
「ぉん‥‥」
「‥?」ふと、先生の顔が浮かぶ。
‥よく似た話やよな。先生の相手も結婚してはるって‥、けど、家の方向違うやん‥‥
まさか、ちゃうよな‥‥‥
「どうしたン?」
いきなり黙り込んだ僕に心配そに服を引っ張る。
「ン?‥イヤ、なんもない。僕らも、寝よか。‥」
戸締まりを確認して部屋に戻る。
「‥義行、‥」
「ン?‥」横を見ると天井を見据えたままで、唇を噛み締めている。
徳一の頭の下に腕を回し頭を抱き抱える。
「大丈夫や。きっとうまくいくから‥‥徳一が心配せんでも大丈夫や。‥‥なっ、そんな顔しぃな。」
「ぉん‥大丈夫やよな‥‥」
僕は徳一が眠るまでずっと、大丈夫やよ‥と繰り返した。
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