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日曜日の朝早く、会社から呼び出しを受け出掛け夕方には戻ってきた。
徳一の事も気になったが義行が傍で付いていてくれるので少し安心して仕事に頭を切り替える事が出来た。
家に帰ると案の定、義行が徳一を連れて出掛けていた。
忙しくしている間はなにも考えなくて済む。‥‥
けど、
ふとした隙間にアイツの泣き顔が浮かんで後悔ばかりが胸を締め付ける。
晩飯の用意をしていると二人仲良く帰ってきた。
「おぅ、お帰り。」キッチンから声をかけると、
「帰ってたんや。」
「悪かったな、帰ってて。」
少し嫌味も込めて二人を見るが、幸せそな二人を見ると心がはれる。
「おじさん、手伝おか?」
手を洗って隣に来る。
「イヤ、今日は大したもんせぇへんからいけんで。」
「ほなっ、サラダでもしよか。徳一もおじさんも野菜あんまり食べへんから‥」
それを訊いて徳一が
「トマトはイヤや。」
「アハハ、ちゃんと皮剥いたるよ。」
「ヴゥー!入れんなや。」
「俺は、食べれるからかまへんで。」
「オヤジ!狡いわー。」
トゥルルルー…トゥルルルー…
「ちょ、義行あと頼む。電話や。」
着信─── 一裕 ──
画面を見て固まる。
携帯を取り仏間へ行き、一呼吸置いて出る。
恐る恐る尋ねる。
声が震える。
俺は、誰も居らんと嘘をついた‥‥
きっと、アイツは誰かが居ると切ってしまうと思ったから‥‥
何かを決心したような声。
別れ話やったらこんな電話で終わらせたない。
ちゃんと、顔を見て訊きたい。
そう思ったら、
自分の誕生日に託つけて誘い出していた。
アイツが断られへんのを解ってて‥‥
‥‥狡い、最低や、‥
俺は、アイツの一番好きな声で囁いた。
迷惑でも、自分勝手でも、例え別れ話でも、逢いたかった。
俺は、二人に黙って家を出た。
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