季節外れの‥‥11

11/22
前へ
/343ページ
次へ
井本の背中を見送ってから俺は、帰り道色んな事を考えた。 アイツから貰ったリングが何を意味するンやろか? その時初めて気付いた。アイツの指にはリングが無いことを‥‥ 俺の髪を梳く時、頬に手を置く時に感じた違和感。 ‥リングがなかったんや。それやのに、俺の名前の入ったリングは首からさげていた。 ポケットの中の俺の左手の中にあるリングが凄く意味の在るものに思えた。 訊きたなったら教えてやる‥ 確かに訊きたい。 やけど今はまだ、友達としてどこまでやれるか‥ ‥アイツには、俺がまだ見えてへん先が見えている気がすんねんな。 ぼんやり部屋に入り、まだ仄かに残る甘い香りを嗅ぐ。 そう言えば、アイツのキスもこの香りがしたな。 ンフフ‥自然に頬が緩んでしまう。 袋に残ったケーキをテーブルに置き予め買っておいた蝋燭をたてる。 「おめでとう。‥」 蝋燭の炎が少し揺らぐ。 この炎のように俺の想いも吹き消す事が出来たなら、笑って傍に居れるのにな‥ けど、こんな仄かな炎なら誰にも迷惑かけんで進んで行けるよな‥ 知らず知らずの内に昔のbirthday songを口ずさんでいた。 「‥‥忘れられない心の傷みも‥‥悲しみも‥‥今夜‥全てを吹き消して‥‥‥」 ‥今の俺やン。 「‥‥君が好きさ、心を込めて‥‥」 ‥生まれてきた、喜びに‥君が包まれるように‥  今日とゆう日を祝うよ  happy birthday to you‥‥‥ 蝋燭を吹き消して、風呂に入った。
/343ページ

最初のコメントを投稿しよう!

44人が本棚に入れています
本棚に追加