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風呂から上がり、ビール片手に一口ケーキを摘まむ。
「甘ったる‥‥」
苦味などほとんど無い、只、甘いだけのケーキ。
‥よぉ、旨いってゆえたな。
苦笑いが込み上げる。
知らんうちにアイツ、えらい甘党になったンやろか?
何かこれからが楽しみや。知らんかった事が一つづつわかってくる。それが、ええ事なンか悪い事なンか‥‥
12年間に何があったか見当もつかんけど、一から始めるには丁度ええやろ。‥‥
ビールを飲み干して、
アイツの事を罪悪感無しに想える。俺は今、幸せかもな。‥
今度逢った時は、何を話しよか。
無意識に唇をなぞっているのに気がつく。
空き缶を捨てて、ベッドに潜り込む。
穏やかな浅瀬に身を委ねて漂っている気分で眠りについた。
うつらうつらし始めた頃、電話の音で引き戻される。
まだ夢見心地で携帯に出る。
「‥はい、‥」起き抜けに近い低い無愛想な声。
「寝てたンか‥悪いな起こしてしもたな‥‥」申し訳なさそうな声。
「えっ、大丈夫や‥どしたん。」嬉しくて声が弾む。
「いやな‥ちょっと‥‥寒かったやろ?喘息でてへんかなって‥‥」心配そな声がする。
「ありがと。でてへんよ。‥これでもちょっとは身鍛えてるし。‥‥こんな時間に、電話していけんか?」
「あぁ、気にせんでええ。何の気兼ねも要らん。 心配せんでええ。‥‥なぁ、訊いてへんかったけどお前今‥‥仕事何してんや?」
恐る恐る尋ねてくる。
「クスクス、‥何やねん。急に、今ゆわなアカン事か?」
「‥いやな‥‥ただ、お前の声が訊きたかっただけや‥‥一人暮らしなんかなぁ、って思ったら、おやすみって言いたなってン。‥」
‥アホやな、優し過ぎンねん。
「なら、おやすみってゆえや。回りくどいことゆうなや。‥」
「ぉん‥また今度ゆっくり飲みに行こや。‥‥‥おやすみ。」
「せやな、空いてる日電話してや。‥おやすみ。」
「ええンか‥電話しても。」
声が弾んでいる。
「クスクス、大丈夫や。‥‥やって、友達やろ?」
「せっ‥せやったな、‥ありがと。ほなっ、またかけるな。おやすみ。」
「おやすみ。‥あっ、誕生日おめでとう。」
「‥ありがと。」
そう言って切れた。‥‥
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