季節外れの‥‥11

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風呂から上がり、ビール片手に一口ケーキを摘まむ。 「甘ったる‥‥」 苦味などほとんど無い、只、甘いだけのケーキ。 ‥よぉ、旨いってゆえたな。 苦笑いが込み上げる。 知らんうちにアイツ、えらい甘党になったンやろか? 何かこれからが楽しみや。知らんかった事が一つづつわかってくる。それが、ええ事なンか悪い事なンか‥‥ 12年間に何があったか見当もつかんけど、一から始めるには丁度ええやろ。‥‥ ビールを飲み干して、 アイツの事を罪悪感無しに想える。俺は今、幸せかもな。‥ 今度逢った時は、何を話しよか。 無意識に唇をなぞっているのに気がつく。 空き缶を捨てて、ベッドに潜り込む。 穏やかな浅瀬に身を委ねて漂っている気分で眠りについた。 うつらうつらし始めた頃、電話の音で引き戻される。 まだ夢見心地で携帯に出る。 「‥はい、‥」起き抜けに近い低い無愛想な声。 「寝てたンか‥悪いな起こしてしもたな‥‥」申し訳なさそうな声。 「えっ、大丈夫や‥どしたん。」嬉しくて声が弾む。 「いやな‥ちょっと‥‥寒かったやろ?喘息でてへんかなって‥‥」心配そな声がする。 「ありがと。でてへんよ。‥これでもちょっとは身鍛えてるし。‥‥こんな時間に、電話していけんか?」 「あぁ、気にせんでええ。何の気兼ねも要らん。 心配せんでええ。‥‥なぁ、訊いてへんかったけどお前今‥‥仕事何してんや?」 恐る恐る尋ねてくる。 「クスクス、‥何やねん。急に、今ゆわなアカン事か?」 「‥いやな‥‥ただ、お前の声が訊きたかっただけや‥‥一人暮らしなんかなぁ、って思ったら、おやすみって言いたなってン。‥」 ‥アホやな、優し過ぎンねん。 「なら、おやすみってゆえや。回りくどいことゆうなや。‥」 「ぉん‥また今度ゆっくり飲みに行こや。‥‥‥おやすみ。」 「せやな、空いてる日電話してや。‥おやすみ。」 「ええンか‥電話しても。」 声が弾んでいる。 「クスクス、大丈夫や。‥‥やって、友達やろ?」 「せっ‥せやったな、‥ありがと。ほなっ、またかけるな。おやすみ。」 「おやすみ。‥あっ、誕生日おめでとう。」 「‥ありがと。」 そう言って切れた。‥‥
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