季節外れの‥‥11

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ジリリリー、カチッ。 ‥アカン、眠たい。  最近、昔の夢をようみるな。やっぱ、あの頃に戻りたいンやろか‥ 寝不足の身体を引きずって、ランニングに出かける準備をする。 外に出ると空気が澄んでいて気持ちが引き締まる。 いつものコースを走り、今日は川沿いで朝焼けを見ながらストレッチをする。 ‥ヨシッ、いつもより調子がええなぁ。 身体は重くて頭は寝不足でボンヤリしてはいるが、心の中はスッキリとこの朝焼けのように輝いている気がした。 部屋に戻り学校へ向かう準備をする。 いつもと違うのは、義行が居ない事と、久しぶりの自転車での通勤。 ‥アイツ、上手いこといってたらええなぁ。居らへんって事はきっと泊まっているはずやし。 自転車をこぎ冷たい風を受ける。 ‥ン、ようわからへんけど今日はええ日になりそやな。 学校に着き、白衣に着替えて珈琲をセットする。 朝練の生徒たちが慌ただしく部活を始めている。 眺めながら、徳一の姿も見当たらない事に気付く。 二人揃って遅いのだから、仲良くしてるのだろう。 ‥ハハハ、マジで思春期が暴走してたりしてな。 保健室に珈琲の薫りが漂い始める。 珈琲を淹れて一口飲むと、今日1日が穏やかに始まる感じがする。 ‥何気ない日常がこんなにも幸せに感じるやなんて、久々やな。  ワクワクしてるのはなんでやろ?   ‥初めて好きやってゆうたクラブハウスも、遅刻寸前に走った廊下も、アイツの背中を追い続けた校庭も全部今までと違って見えるな。 ‥不思議なもんや。気持ち一つで変わるんや。 俺はいつも義行が見ている場所であの頃を重ねて眺めた。
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