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トゥルルルー、トゥルルルー、‥‥
携帯を取り出すと
──着信── 一裕 ───
表示に驚く。二人に悟られないように自然に振舞いながら出る。
「はい。‥ 」
「‥おはよう。今、電話大丈夫か?」小さい声で尋ねてくる。
変に気を回させないように平然と
「あぁ、大丈夫やで。どうしたんや?」
言いながら二人から少し離れてリビングに行く。
二人は感づいたのか静かに息を潜める。
「いやな、大した用事やないんやけど、お前の休み聞いとこッて思てや。‥」
遠慮がちに話し出す。
「俺の?」
「あぁ、プレゼントでけへんから飲み奢ろかなって‥‥お前、前回何や長い事仕事で休みなかったやろ?」
「せやったな。‥」
そんな些細な事を覚えていてくれるのが嬉しくて声が弾む。
「それでな、俺やったらいつでも大丈夫やし。この間みたいなのは滅多にないしや。‥」
「そうなんや。ほなら、ムッチャ間が悪かったんや。‥」
「せやなぁ。‥」
キッチンでは、二人が心配そに聞き耳をたてている。
二人を一瞥して睨みをきかすが、平気な顔で
(オヤジ、誘えー!ゆえやぁー!)
口パクで叫んでいる。
ハァ~。思わずため息が漏れる。
「ごっ‥ごめんな。朝の忙しいときに、‥また今度でええし‥」
勘違いしたアイツが慌てて電話を切ろうとする。
「ちょっ!待てや、ちゃうから。なっ‥切らんでええから、‥俺な明日昼からまた仕事やねん。当分休みわからんねん。」
「アッ‥‥そうなんや‥‥しゃぁないな。また今度かけてきてや。」
目ッ一杯残念そな声になる。
「なぁ‥今日はどうや?」
「‥?アッ、‥アカンやろ。やってや‥お前家で祝ってもらうやろ‥‥‥」
「いいや。誰もそんなんしてくれへんで。ゆうてくれたン、は、‥‥お前だけや。やから、なっ‥‥」
二人が聞いているのも忘れて、甘い声で囁いてしまう。
「‥そやけど‥やっぱ、‥」声に戸惑いを隠せないでいる。
「クスッ、大丈夫やょ‥俺かて一人でいややん。‥一緒に祝ってくれるんやろ?‥‥なぁ‥俺、楽しみにしてんで。」
こうゆうところ俺は、狡いと自分で思う。
こんな言い方したら、よう断らんのを知っているから。
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