季節外れの‥‥11

17/22
前へ
/343ページ
次へ
トゥルルルー、トゥルルルー、‥‥ 携帯を取り出すと ──着信── 一裕 ─── 表示に驚く。二人に悟られないように自然に振舞いながら出る。 「はい。‥ 」 「‥おはよう。今、電話大丈夫か?」小さい声で尋ねてくる。 変に気を回させないように平然と 「あぁ、大丈夫やで。どうしたんや?」 言いながら二人から少し離れてリビングに行く。 二人は感づいたのか静かに息を潜める。 「いやな、大した用事やないんやけど、お前の休み聞いとこッて思てや。‥」 遠慮がちに話し出す。 「俺の?」 「あぁ、プレゼントでけへんから飲み奢ろかなって‥‥お前、前回何や長い事仕事で休みなかったやろ?」 「せやったな。‥」 そんな些細な事を覚えていてくれるのが嬉しくて声が弾む。 「それでな、俺やったらいつでも大丈夫やし。この間みたいなのは滅多にないしや。‥」 「そうなんや。ほなら、ムッチャ間が悪かったんや。‥」 「せやなぁ。‥」 キッチンでは、二人が心配そに聞き耳をたてている。 二人を一瞥して睨みをきかすが、平気な顔で (オヤジ、誘えー!ゆえやぁー!) 口パクで叫んでいる。 ハァ~。思わずため息が漏れる。 「ごっ‥ごめんな。朝の忙しいときに、‥また今度でええし‥」 勘違いしたアイツが慌てて電話を切ろうとする。 「ちょっ!待てや、ちゃうから。なっ‥切らんでええから、‥俺な明日昼からまた仕事やねん。当分休みわからんねん。」 「アッ‥‥そうなんや‥‥しゃぁないな。また今度かけてきてや。」 目ッ一杯残念そな声になる。 「なぁ‥今日はどうや?」 「‥?アッ、‥アカンやろ。やってや‥お前家で祝ってもらうやろ‥‥‥」 「いいや。誰もそんなんしてくれへんで。ゆうてくれたン、は、‥‥お前だけや。やから、なっ‥‥」 二人が聞いているのも忘れて、甘い声で囁いてしまう。 「‥そやけど‥やっぱ、‥」声に戸惑いを隠せないでいる。 「クスッ、大丈夫やょ‥俺かて一人でいややん。‥一緒に祝ってくれるんやろ?‥‥なぁ‥俺、楽しみにしてんで。」 こうゆうところ俺は、狡いと自分で思う。 こんな言い方したら、よう断らんのを知っているから。
/343ページ

最初のコメントを投稿しよう!

44人が本棚に入れています
本棚に追加