季節外れの‥‥12

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電話を切って頭の中で今の会話を反芻する。 俺からの誘いやって思て嬉しかったッてゆうてくれた。‥‥ なんてことの無いアイツの言葉に、はにかんでしまう。 けどな、‥夫婦仲上手いこといってへんのか? TVの音してたから家からやんな。 あんなけ誕生日にこだわってたのに、何で祝ってもらわれへんねん。 ‥おかしいやん。 そんなんでええンか? 知りたくなった。‥アイツの奥さんの事を。 でも、もしも不仲やって訊いてしまえば、俺はアイツをよぉ離さん。‥ ‥そんなんでけへん。訊かれへん。  まさか、俺を安心させる為にそんな嘘ついてるンやろか? 複雑な想いのまま、コーヒーを飲み干した。 校庭ではまだ生徒達が部活をしている。 「なぁ、藤原。俺今日誕生日やねん。‥」 「知ってンで、おめでとうッてゆうたやん。」 「おん。けどな、何回も訊きたいやん。」 「ハイハイ、‥おめでとう。」 「ありがと!‥も一回ゆうてや‥」 「ハイハイ、何回でも‥おめでとう。‥」 「おん!」 「貴史君、お誕生日おめでとう。」 「ありがと!ッて小学生か!」 嬉しそに笑った顔が浮かぶ。 昔に繰り返した台詞。あんなけ、ゆうて欲しがったのに‥‥‥ ‥何でやねん!‥ ‥そんなんで、ええンか?‥ 少し眉間に皺が寄る。が、所詮俺は友達でしかない。 ため息をついたとき、この間の引きこもりがちの例の生徒が遠慮がちに入ってくる。 「先生、おはよ。‥今、教室へ行ってきてンな‥皆優しかったょ。」 「ン?おはよ。‥そっか、良かったやん。けど、無理すんなや。」 「はい、頭で考えてばっかりやったから不安になってたんやなぁッて思ったわ。‥‥」 少し笑顔で答える。 「そっか、 ‥‥ン?外に居るんは友達か?一緒に中へ入って来たらええのに‥」 廊下で中の様子を窺っている人影が見える。
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