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マツコ先生の後ろで徳一と義行が心配そうに見ている。
助けてくれと目で訴えるが、大きく無理と口が動く。
徳一が義行の手を握っているのが見えた。
‥うまい事いったんやな。
この状況にそぐわない事を考えてしまう。
「先生?」
「‥はい」
「一緒に食べましょうね。」
にっこりと微笑まれて、ロックオンされてしまった。
「あ‥‥はい‥じゃあ、お茶いれますね。」
立ち上がって湯呑みを取りにいくとポケットで携帯がなる。
トゥルルー、トゥルルー、‥‥
湯呑みをマツコ先生に渡し、すいませんと頭を下げてから携帯にでる。
「はい‥」極力小さな声ででる。
「あっ‥俺。あのな、今夜の飲みやけど‥」
「もしかして、アカンのか?‥」
「ちゃうちゃう。最後まで訊きぃや。‥お前ん家でアカン?‥‥」
「ちょっ、‥何でいきなり‥」
驚いて少し大きめの声がでる。周りの奴等全員が聞き耳をたてて聞いている。
出来ればこんな状況下で電話はしたくないが、折角の電話をきる事が出来なかった。
「いやなぁ、ちょっとええもん買ってン。旨いもんやから、お前と一緒にこれで飲めたらなぁ、ッて思てン。‥」
優しい声が俺の耳元で囁き続ける。
「お前の美味しそに食べる顔好きやし、また見たいやん‥鍋やったら迷惑掛からんかなッて、‥‥なぁ、アカン?‥もう買ってあるンやけど‥ええやろ?‥」
‥ええやろッて、‥そんな風にゆわれたら俺、うんッて、頷くしかなくなるやん‥
優しい声が俺の頭のなかを支配するように響き、もう周りなど見えない。
皆が気づき始めている。
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