季節外れの‥‥13

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義行と別れてから職員室により校長先生に挨拶を済ませた。 自転車で速攻で部屋に帰ると、取り敢えず窓を開けて換気をし、掃除機をかける。 片付ける程の荷物は無いが他人を部屋に上げた事が無いため緊張が半端ない。 それも初めて来る相手が井本やと、正直どうすればええかがわからない。 食器類は極端に少ないし‥‥ 冷蔵庫にビールを冷やしながら食材をチェックしたが、特に何もない。 何の鍋かわからず用意のしようが無かった。 せめて、野菜とか用意しといた方がええよな‥ スーツを脱ぎ着替える。インナーシャツの中に隠してあるリングを手にしながら、煙草に火をつけ一息つく。 これがあるだけで幸せに感じるなんてな‥‥ 義行にはゆわんかった、アイツとの秘密‥ 俺だけが、繋がってる気がするから‥ リングの名前を見てアイツの顔を想い浮かべる。 ‥ンッ、アイツより俺の方が最高の一日になったりしてな、クスッ‥ 「さぁ、腹くくって電話かけよか‥」 携帯を手に、今日は二回目となる番号に発信する。 トゥル‥ 「もう終わったン?」コール音が聞こえるか聞こえないか位の早さで電話に出る。 「ぉん‥」 「ムッチヤ、早いな。何処からかけてン?会社?駅?‥待ち合わせて藤原ん家か?」 次から次に質問を浴びせられる。 ‥フッ、気ィ短いのは変わってへんな そう思って頬がゆるむ。 「今、家からや‥」 「マジなん?家何処なん?」 「ン、説明しにくいで、それに俺ん家なんもないから買いもんせなアカンねん‥」 「あぁー、いけんで。俺ん家から持っていくから。‥‥」 何か言いたそにしている。 「ン?‥」 「あんな、‥いきなりお前ん家にや、‥行ったら迷惑とちゃうんか?‥‥」 「はぁ?‥ 」 今まで強気で俺ん家ッて、ゆっといて今更しり込み何ですんねん。迷惑ッて、それ俺の台詞やん‥‥そう思うと笑ってしまう。 「アハハ、お前が言い出しといて何を寝惚けた事ゆうてんねん。‥誕生日祝ってやるから俺ん家来いや。」 ‥先生と二人で飲みたいからなんやで。 義行の声が聞こえる。
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